2006年06月24日

被害者、家族感情を受け止める、受け入れる?

「光市の母子殺害、最高裁判決6月20日 安田好弘弁護士を擁護する」
http://pueblo.seesaa.net/article/18327458.html?reload=2006-06-24T21:15:55
へのコメント長くなったので、こちらに記事としました。この事件についてタイトルに「光市の・・」と含むほか、下記にも書いています。
「あるラジオパーソナリティーへのメール」
https://blog.seesaa.jp/pages/my/blog/article/edit/input?id=15909684

<3月の準備期間は長すぎるか?>
 弁護士ではありませんが、キチンとした弁論を考えれば、3月と言うのは決して永い期間ではないのです。裁判に提出され争われる書面は実に膨大です。検弁双方の証拠、調書の評価が同じであれば時間は要しませんが、責任ある緻密な弁護をしようとすれば、まず対立点は生まれます。
 
 
キチンとした審理、責任追及を出来る限り追求すれば、そうなってしまうのです。単純な調停程度でも当事者にはもどかしい位です。
 そしてそれは逮捕令状が自販機から出ると揶揄したいほどの割合で出され、判決の9割以上が有罪。
 また誰もが周知の、昨今の警察、検察の内部の腐敗規律の低下を考えれば、この点を非難することが不十分で一面的な自白偏重の捜査、起訴を許容し、警察に目をつけられたらおしまいの社会を招くことにも繋がるのです。
 お時間のある折りに、一度でも傍聴し、是非そこに提出される書面の量を見てくださればと思います。

<7年の無期懲役?>
 これは、出所者の刑期の平均の数字です。誰もが必ずと言うことでは無いのです。と現在の刑務所が覚醒剤の使用犯を、薬物依存症の治療はすることなく単に刑期だけ収容し、定員過剰を招いている故の、その再犯者の増加と、全体への矯正対策の余裕を持てない現状が、高い再犯率、刑務所が犯罪者の相互教育の「大学」と化す事態をうんでいるのです。

<被害者感情は絶対なのか?>
 こうした犯罪の被害者の心を受け止める社会であるべきですし、そうした仕組みは早急に作られるべきだと思います。
 しかし社会がその全てを受け入れる、実現するそうしたものでは無いと考えます。
 端的な例が、本村さんの、現行法で死刑が存在するのだから、との留保をつけてもの、マスコミが商業的に利用する面があるとは言え「自分の手で・・」の発言です。これは決した許容出来ぬ事です。
 感情のありようとしての了解は出来ますが、公言する実現しようとする事では断じて無いのです。
 許し得ぬ行為に、それを以て報いるのは根本的背理です。
 報復の論理と言えるでしょう、それを他の社会的部面で、当然事として適用出来るでしょうか?
 彼の主張が、被害者の存在を裁判制度の中に適切に反映させたいの第一点と、終身刑の緊急の導入であれば、より広範な共感を得たでしょうし、それは是非支持したいと思います。

<報道の責任は大きい>
 秋田の事件で日テレ「ザ・ワイド」が二度目の弁護士会見の直後に、首を絞めるのに50センチの腰ひもではおかしいと、出席者が「短すぎる」「だから信用できない」「そうした演技性のある人間・・」等一騒ぎ、容疑者の人格非難で盛り上がっていたことがあります。犯罪心理の専門家、ヤメ検弁護士などのコメンテーターが。
 ところがそれは、弁護士が1メートル50・・と言った1メートルの聞き逃しだけの事だったのです。その訂正も反省も一語もありませんでした。
 奈良の放火事件も、第一報をラジオで聞いて、火災に実名報道?と思いながら次の時間には、家族の行方不明が。
 まずいのにと考えていたら少年の逮捕で匿名に並びましたね。
 事ほど左様に、現在のマスコミの報道は兎に角目立つことに特化しすぎているのです。
 そして、社会はこのセンセーショナルな、警察の非公式発表、時にはリーク、独自取材と言う何処の誰かが明らかでなく、裁判であれば当然証拠能力を持たない「証言」「告白」、関係者の声の声色の代読、ナレーション、テロップ、BGMで構成された、事実との乖離の余りに大きい、再構成された「物語」で、凶悪犯罪を知った、理解したとする回路が出来てしまっています。
 さらにそれは、本来専門家として、あたう限り客観的な判断をすべき法曹関係者をも、社会感情として拘束してしまうのです。

<被害者を言うのならば>
 同じ日に若干書きましたが、C型肝炎訴訟の判決がありました、一部の方は請求を認められませんでした。何故、こちらに大きな被害者感情への共感が生まれないのでしょうか、それが不思議です。またHIVの被害者に、いくつもの行政の不法行為、不作為の犠牲者に。
 更に拡げれば、人類と言う生物の在りようと、当然生まれる変異として、また遺伝として難病を負って、ある時は知らざるを得ない限られた生を、運命づけられた人々に。
 こうした、きっかけ理由は何であれ、本人に何の責の無い痛み苦しみを、社会が分かち支え合う仕組みこそが、早急に必要なのでは無いでしょうか?
そして、刑事罰として根本的な背理であり、アメリカ、中国の死刑大国の実例で明らかな、犯罪抑止に全く効果のない死刑の廃止と、終身刑導入が。
posted by じゅん at 22:32| Comment(2) | TrackBack(4) | 光市母子殺害事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
トラックバックありがとうございました。
で、いきなり2つもトラックバック返しをしてしまった失礼をお許しください。
私としては、「2つで1つ」的なエントリーなもので。

私は大変に情緒的・感情的な人間なので、事件直後の本村氏の「自分の手で・・」発言は、理解できるものがありました。
きれい事を抜きにしたら、こう感じるだろうよ、と。

が、その時にはバッシングも多かったはずのこの発言が、いつの間にやら「主流派意見」みたいになり、どんどん「死刑だー!!」の声が大きくなっていったことに、危うさを感じています。
危ない方向に流れているこの国の現状を象徴しているようで、不気味です。
Posted by gegenga at 2006年06月27日 16:21
こちらこそご挨拶の上でをお断りもなし失礼致しました。わざわざご挨拶ありがとうございます。
 感情として、あり得るだろ、そこは誰もの了解項だと思います。昨日広島の木下さんもほぼ同趣旨の発言をされていましたが、犯罪の詳細に触れぬのは、今以上に被害者本人を辱めまい、その暗黙の了解と考えるべきでしょう。
 又、お二人の発言に任せるのも、得心はつまるところ本人の問題に尽きる、年を喰えば誰もがそれに実感があり、待つそうした事なのですが。
 記事に書きのように、「物語化」のコンテンツビジネスは、その余裕すら持てないのでしょう。
Posted by じゅん at 2006年06月27日 22:32
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